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日本は、権力格差指標が高くて、イノベーションが起きにくい!

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こんにちは。

山口周さんの「世界で最もイノベーティブな組織の作り方」光文社新書 2013年10月初版)を読んでいましたら、権力格差指標という、あまり聞きなれないワードが出てきました。

興味深く思いましたので、今回は、同書を引用しながら、この権力格差指標について、お伝えしたいと思います。

 

 1.権力格差指標

 (1) 大韓航空機事故

 1997年8月5日、グアム行き大韓航空801便は、グアム国際空港の1キロほど手前の台地に激突、墜落し、乗客乗員254名のうち228名が死亡するという事故を起こしました。

コックピット内の機長、副操縦士、及び航空機関士の3人による事故時の音声記録が残されています。

機長は、目視によって着陸しようとしましたが、天候のうえからは計器着陸の方が安全だと判断していたらしい副操縦士航空機関士は、「もっと雨が降ってきそうだな」「気象レーダーはとても有用」などと、そのことを窺わせる独り言のような発言はしているものの、直接、機長に対して、明確に計器着陸すべきだとは告げていません。

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この時期、大韓航空機は立て続けに重大事故を起こしています。

一連の事故について、事故調査委員会は、コックピットを包む「空気」に原因があることを指摘しました。(以上、同書P.54~P.68)

 (2) 権力格差指標

 この「空気」とは、「目上の人に対して、反論したり意見具申したりすることが難しい」ということです。

そして、それは「その人が所属する文化圏=国によって異なる」。

 

「目上の人に反論したり意見具申したりする」行動に対する心理的抵抗の度合いを、オランダの心理学者ヘールト・ホフステードは権力格差指標(PDI:Power Distance Index)と定義しました。

 

ホフステードは、権力の格差を「それぞれの国の制度や組織において、権力の弱い成員が、権力が不平等に分布している状態を予期し、受け入れている程度」としています。(同書P.71)

 

G7各国の権力格差指標は次のようになっています。

フランス 68

日本   54

イタリア 50

アメリカ 40

カナダ  39

ドイツ  35

イギリス 35

 

ちなみに、韓国の指標は60です。

この指標の数値が低い国・組織であるほど、上司に対する率直な意見具申ができやすいことになります。

そういう国・組織であれば、大韓航空機の事故も防ぐことができた可能性があるということです。

 

しかし、どの国も、この指標が「0」というところはありませんので、たとえ欧米の諸国においても、なかには権力主義的、官僚主義的で、上司に対する意見具申がしにくく、また、上司も部下の意見を聞こうとしない組織は、当然、あり得るわけです。

営業会議, 会議, ビジネス, オフィス, チーム, チームワーク, 人, 仕事, テーブル, 通信, 会社 

 

(3) 日本の場合、その他

 日本の点数は54で、欧米諸国よりも高くなっています。

ただし、他のアジア諸国に比べますと低い点数です。

どうでしょうか。

わが国において、また、それぞれが所属する組織において、上司に対して、率直に意見を言える雰囲気、「空気」はあるでしょうか。

 

「YES」とは言えないでしょう。

私が定年退職まで、その後も3年間、所属していた組織(地方自治体)でも、上司に対する意見具申、上司と部下との間での率直な意見交換というのは、少なかったというよりも、ほとんどなかったように思います。

 

しかし、人の生命がかかっている場面では、いくら何でも、上司をぶんなぐってでも、安全策をとるように言うとは思いますが……。

 

この本には紹介されていませんが、ネット上で確認できますので、他の国の権力格差指標も紹介しておきます。(次の「2.イノベーション指数」と関連しますので。)

スイス 34スウェーデン 31シンガポール 74フィンランド 33、オランダ 38デンマーク 18イスラエル 13、香港 68アイルランド 28ルクセンブルク 40アイスランド 30、中国 80、オーストラリア 38ニュージーランド 22オーストリア 11

https://www.hofstede-insights.com/country-comparison/から)

 電球, 光, アイデア, 電気, エネルギー, グロー, イノベーション, 思考

 

2.イノベーション指数

山口周氏のこの著作は、イノベーションがテーマですので、上記のように、権力格差指標の高い国では、イノベーションが起こりにくい状況にあるのではないか、という文脈になります。

 

そこで、山口氏は、フランスの経営大学院INSEADが、2012年に発表した国別イノベーション指数で、トップ5スイス、スウェーデンシンガポールフィンランド、イギリスであったことを紹介しながら、

これらの国々の権力格差指標が非常に低いのは単なる偶然ではないと筆者には思えるのです。両者のランキングの相関は、「組織内での自由闊達な意見のぶつかり合い」がイノベーションの促進にとって重要だということを示唆しているように思われます。(同書P.81)

と書いています。

 

現在、インターネットでは、このINSEADのほか、WIPO世界知的所有権機関)、コーネル大学等の共同で、グローバル・イノベーション・インデックス(GII)の2019年版の世界ランキングが公表されています。(カッコ内は前年の順位)

https://www.globalinnovationindex.org/gii-2019-report

1位  スイス(1)

2位  スウェーデン (3)

3位  アメリカ合衆国 (6)                                                

4位  オランダ (2)

5位  イギリス (4)

6位  フィンランド (7)

7位  デンマーク(8)

8位  シンガポール (5)

9位  ドイツ (9)

10位  イスラエル (11)

11位  韓国 (12)

12位  アイルランド (10)

13位  香港 (14)

14位  中国 (17)

15位  日本 (13)

16位  フランス (16)

17位  カナダ (18)

18位  ルクセンブルク (15)

19位  ノルウェー (19)

20位  アイスランド (23)

 

権力格差指標とイノベーション指数との相関は、いかがでしょうか。

ピッタリ、というわけにはいきませんが、「うーん、まあ、おおむね、そうかな…」という程度でしょうか。

上位は、確かに相関が強いように思われます。

Cpu, 技術, コンピュータ, 半導体, データ, Pcb, コンデンサー 

 

3.個人主義指標

ネットで公開されていますホフステードインサイト*1に、各国の文化的差異の指標としての個人主義(Individualism)指標があります。

 

これは、その国が個人主義的か、集団主義的かという指標になります。

指標の点数が高いほど、個人主義的とされます。

権力格差指標との関連が強いように思われますので、参考までに紹介しておきたいと思います。

 

G7の各国の個人主義指標は、次のようになっています。

アメリカ  91

イギリス  89

カナダ    80

イタリア  76

フランス  71

ドイツ    67

 日本  46

 

フランスを除き、権力格差指標と反比例しています。

つまり、上司に対して率直な意見具申をする国、上司の権力に拒否的な国ほど、個人主義的であり、その逆もまた真なり、という感じです。

フランスは、ちょっと特異ですね。

権力主義的な雰囲気もあり、また個人主義的でもあるというように……。

 

他の国の個人主義指標は、次のようになっています。

オーストラリア 90、、スウェーデン 71ノルウェー 69フィンランド 63、中国 20シンガポール 20、韓国 18。

 

これらを見ていると、欧米諸国とアジアとの文化の違いが顕著のように思われますが、ここでも、日本は、他のアジアの国よりも集団主義的傾向が弱いという評価になっています。

 

今回は、山口周氏の著作から、権力格差指標の高い国ほど、イノベーションは起きにくいのではないか、ということについてお伝えしました。

 時間の広場, ニューヨーク, ジャム

今日も、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。

(2020.07.31)

 

 

*1:山口氏の本では、「ホフステードの4次元」として紹介されていますが(同書P.70~P.71)、ネットを見ますと、現在は「6次元」になっているようです。