これは、ひどい、本当にひどい!
法務省の黒川弘務東京高検検事長の定年延長問題に対する政府の対応ぶりは、目を覆いたくなるような惨状を呈しています。
一つの無理押しを取り繕うために、国会での前言修正と苦し紛れの言い訳が重ねられる様は、法治国家としての法秩序レベルの低さを内外に知らしめることになって、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の新型コロナウィルスへの政府の対応に対する内外の批判の高まりと相俟って、わが国の国際的信頼度を低下させてしまうことになりかねません。
1.定年延長の法的根拠
そもそも、今回の定年延長の法的根拠について、検察庁法によって、63歳で定年、かつ定年延長の規定のない検察官に、国家公務員法の定年延長の規定が適用されるかどうか、政府の対応はちぐはぐなものになっています。
◆経緯
- 今年1月31日、国家公務員法の規定に基づき、黒川検事長の定年を半年延長することを閣議決定
- 2月10日、国会予算委員会で、1981年に人事院の担当者が国会で「検察官には国家公務員法上の定年制は適用されない」と答弁していたことが明らかとなる。
- 2月12日、人事院の松尾給与局長が「(81年4月から)現在まで同じ解釈を継承」と発言
- 2月13日、国会で首相が「国家公務員法の規定が適用されると解釈することにした」と解釈変更に言及。
- 2月17日、森法務大臣が、解釈は1月に変えたと発言
- 2月19日、松尾局長が、法解釈変更了承と答弁を修正
- 2月20日、法務省は、国会に「検察官にも国家公務員法の規定が適用されると解するのが自然だ」とする見解を文書で提出したが、作成日の日付が不記載。
- 2月21日、野党の指摘を受け、法務省は上記文書の右上に「1月22日人事院へ交付」と追記して最提出。

2.口頭決裁!!!???
上記の解釈変更について決裁を取ってあるか、ということについて、
口頭決裁!? はぁ? そんなの、あり!?
重要な解釈変更を、口頭で決裁したって! 法務省が!
国の法の番人たる法務省が!
呆れて開いた口がふさがりません。
それも、最初からきちんと説明するならまだしも(きちんと説明できない事情がある)、「決裁を取っている」「正式な決裁は取っていない」の矛盾を責められて挙句の「口頭決裁」。
行きつくところまで行った、という感じですね。
私の地方公務員の経験からも、行政の仕事で口頭決裁はあり得ないと思います。
口頭決裁では責任の所在が分かりません。
後から検証のしようがありません。
1981年の国会答弁を知らずに閣議決定してしまって、その辻褄合わせに大わらわという印象です。
公文書を紛失したり、すぐに廃棄したりする政権ですからね。
市町村レベルでやっていることも、この政権ではできないのでしょうね。
白も黒と言わなければ、そこでは生きていけないのでしょうかね?
公務員としての矜持はないのでしょうか?
3.法曹からも批判の声
今回の、黒川検事長の定年延長疑惑には、法務省内部、法曹関係者からも批判の声が出ています。
◆2月19日、全国の法務・検察幹部が集まる「検察長官会同」で、静岡地検の神村昌通検事正から、「今回のことで政権と検察の関係に疑いの目が持たれている」「国民からの検察に対する信頼が損なわれる」などの発言がありました。
そこには、法務大臣、検事総長と当の黒川氏もいる席での話です。
かなり怒り心頭だったのでしょう。
◆2月21日、憲法学者らでつくる「立憲デモクラシーの会」が国会内で記者会見し、「時の政権の都合で従来の法解釈を自由に変更していては、国民の法への信頼が崩壊する」と批判しました。
法務省の職員や検事の多くは、今回の定年延長に批判的だと思われますが、会議の場で公然と批判する人がいたということは、法務省にとって、せめてもの救いです。
公文書管理は民主主義にとって、ものすごく重要なことだと思います。
これを疎かにするような政権は、民主主義政権とは言えません。
今回は、余りのことに、政治ネタになってしまいました。
(2020.02.25)