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【フランス社会保障事情】行政の姿勢、こうありたい。

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こんにちは。

今回も、都留民子著「失業しても幸せでいられる国-フランスが教えてくれること」(日本機関誌出版センター)の中から、私がたいへん興味深く感じたことをお伝えしたいと思います。

 貧困政策の実施状況に対するフランス厚労省の反応

それは、著者が「フランス研究にのめりこんでいった」(同書P.68)きっかけとして紹介している、1988年に失業者への生活保護RMI:エレミー*1))が制度化されたときのフランス厚労省の対応です。

同書のその部分を引用します。

「こういう新しい制度ができて、今まで失業保険がもらえなかった人たちももらえますから、いまからすぐ役所に申し込みに行ってください。」というテレビの宣伝がずっと流れてました。それから役所の掲示板なんかも、とにかくエレミーができたので即受けなさいというものでした。

この制度は、1988年12月の初めに国会を通って、年明けには受給者が40万人になったそうですが、「それを見て、厚労省がこれは大成功だと、制度を作ってこれだけ受給者がいるってことは大成功だったっていう、そういう発表をしたんですね」(同書P.67)

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行政の姿勢

私としてはもっと知りたいところですが、これだけの内容です。

このフランス厚労省に関する短い文章を読んで、私は「ブラボー! 行政はこうでなくてはいけない」と強く感じました。

国民のニーズがあって制度をつくり、それをPRして、その結果、利用者が多いということは、制度立案、設計、広報・周知活動において間違いがなかったということの証明ですから、上記のフランス厚労省の反応はごく当然のように思います。

しかし、わが国では、貧困対策はじめ福祉分野の対人サービスについて、テレビでずっと宣言することはありませんし、まして、その利用者が増えたことを喜ぶ公務員は少ない(ほとんどいない)のではないかと思うからです。

もちろん、日本の場合ですと、福祉行政の多くは、国が制度を作り、地方自治体はそれを予算化して実施するというスタイルですので、もしかしたら日本の厚労省でも、フランスと同じ情景が見られるのかもしれません。(私は、そうではないと思っていますが…。)

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行政は、誰のための仕事をするところか?

私は、元地方公務員ですので、その狭い体験から言えることは、少なくとも地方自治体では(あるいは、私が働いていた自治体では)、福祉サービスの利用者が増えて喜ぶということはないと思います。

自らが予算化し実施しているサービスの利用者が増えることを喜ばないばかりか、杓子定規な解釈や対応によって、反対に利用者を絞るような傾向さえ見えます。

そのくせ、予算要求の時期になると、国が作った事業メニューからできるだけ多くの事業について予算要求しようとします。

「予算は欲しいが、仕事はしたくない」という、日本の役所というのは本当に妙なところだと思います。

行政とは、市民の生活を維持向上させるための仕事をしているはずです。

誰のための仕事か、ということを忘れてはいけません。
 

札幌女性餓死事件

著者は、このフランス厚労省のことを、1987年1月に起きた「札幌女性餓死事件」👇と対比しながら記述しています。

札幌・女性餓死事件


この事件は、福祉事務所が生活保護の申請相談に来た女性(当時39歳)に対して、「まだ若いのだから働きなさい」と門前払いして保護しなかった結果、3人の幼い子どもを残して女性が骨と皮だけになって衰弱死してしまった事件です。

部屋には、次のようなメモが残されていました。

母さんは負けましたこの世で親を信じて生きた

お前たち3人を残して 

先立つことはとてもふびんでならないが 

もう、お前たちにかける声が出ない 

起き上がれない 

なさけない 

涙もかれ、力もつきました。 

お前たち空腹だろう 許しておくれ 母さんを・・・・

 

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社会保障学者として、日本の悲惨な事件に接した著者が、フランスで見た行政の姿勢の素晴らしさ、当たり前と言えば当たり前の反応が、日本とあまりに違うことに衝撃を受けて、「フランス研究にのめりこんでいった」ことが想像できます。

私も、元地方公務員で、生活保護の現場経験者ですから、著者の心情についてよく理解できるように思います。

わが国では、生活保護をめぐる悲惨と言うより残酷な事件が、「札幌女性餓死事件」のほかにも多く起きています。

 

生活保護制度について

わが国は、憲法第25条に基づく生活保護制度があります。

しかし、残念ながら「困ったときには生活保護制度がありますから、どうぞ申請してください」とテレビで宣伝することはありません。

「保護の利用者が増えた、困窮した生活から救われた人が多いということだ、よかった」という行政を見たことがありません。
 
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、解雇、雇止め、休廃業等によって生活保護の申請者が大幅に増えていると報道されています。

生活保護の申請は、憲法で保障されている生存権の行使です。

困った人は申請することを遠慮する必要はありません。

厚労省新型コロナウイルス感染症に関するリーフレット「生活を支えるための支援のご案内」にもちゃんと生活保護制度が載せてありますから政府は、テレビで「生活保護もご利用ください」とは宣伝していませんが)

 

今回は、都留民子著「失業しても幸せでいられる国」のなかのフランス厚労省の対応について、わが国の状況と対比しながらお伝えしました。

わが国の人権意識がもっと定着、浸透するように願うものです。

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今日も、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。

 (2020.05.23)(一部修正 2020.06.29最終) 

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*1:「この制 度は、失業者や学歴が低く雇用が得られない若者たちに対して社会的な最低所得を保障するとともに、社会生活や職業生活への参入を図ることを目的としている。現在、受給者は125万人を超え、受給者はエレミストと呼称されるほど社会に浸透している。」(出雲 祐二「フランスの所得格差とRMI」)