こんにちは。
私は、地方公務員を定年退職し、そのまま再雇用制度で仕事を続けながら、社労士試験を受けました。
去年は択一式が2点足りず不合格。今年も受験して、今は11月の合格発表待ちの状態で、合否の見込みは・・・、正直、「微妙」です。
【追記】「救済」制度によって、なんとか合格できました。
「社労士試験は、要するに暗記試験である」と言われます。
私のような年齢になると、記憶力がガクンと落ちて必要なことをなかなか覚えることができません。
試験前に「勉強の方はどうですか?」とよく訊かれましたが、そのたびに「1つ覚えて2つ忘れる毎日です」と答えていました。
しかーし! 実は、社労士試験は若い受験者より定年退職者の方が有利な点があることをご存じですか?
定年退職後に、社労士資格に関心がありながらも、年齢を考えて「難しいだろうなあ」とあきらめかけているあなたに、「そんなことはありません! 大丈夫です。」とお伝えしたくてこのブログを書いています。
実際に試験会場では多くのご同輩のお姿をお見かけしました。
さあ、あなたも社労士試験にチャレンジを!!
1 定年退職者の方が試験勉強する余裕がある。
① 時間的に余裕ができる。
定年退職後に仕事していたとしても、現役のときよりも1週間当たりの勤務時間数は短縮される場合が多いでしょうからその分勉強する時間ができます。
私の場合も、週所定勤務日数・時間数が5日間38時間45分から4日間31時間に減りました。1日増えた休日の活用は貴重でした。
② 精神的に余裕ができる。
再雇用での業務は、多くの場合、現役の時の役職に伴う責任から解放されて、自分の仕事だけに専念することができるので精神的な負担が軽減されます。
私の場合も、新人職員と変わらない一兵卒になりました。
仕事のことについて、帰宅してからいろいろ考える必要がありませんので、その分試験勉強に専念できます。
2 定年退職者は自分のこととして試験科目に当たることができる。
試験科目の内容を一から十まで知識として新しく学ぶこととに比べて、その一部分でも自分の体験として接したことがあれば知識の定着度が違ってきます。
①社会人としての体験が豊富
ア 社労士試験科目は、労働関係、社会保険関係ですから、社会生活をしていると、自分や家族のこととして何かしらそれらの制度と接したことがあるはずです。
テキストから知識として学ぶより、実体験は強い!
イ 仕事上の業務として担当していた可能性もある。
私の場合、人事、総務関係の経験はありませんが、国民健康保険の担当部署に在籍していたことがあって、健康保険法の給付関係はほとんど国保と同じであるため比較的すんなりと頭に入ってきました。
②制度の利用者であり、自分の生活、お金の問題である。
定年退職すると、特に、以下の4つの科目については、自分のこととして手続きを行ったり、考えたりすることになりますので、まさしく他人事ではなく自分事になります。
例えば・・・
a 雇用保険について
★定年退職したら、雇用保険(失業者給付/基本手当)はどれくらいの期間、いくらもらえるのか?
★再雇用したあとの退職の時期は、65歳になる前がいいのか、後がいいのか?
★定年退職して、しばらくゆっくり休んでから再就職をしたいんだが、そういう時の雇用保険の手続きはどうすればいいの?
b 健康保険について
★再雇用で給料が安くなったのに保険料の額はそのまま?
★会社を辞めた場合は、健康保険の任意継続がいいのか、国民健康保険がいいのか?
★公務員で現役の時は共済だったのに、再雇用になると協会けんぽに変わるのか?
c 厚生年金について
★60代前半の特別支給の老齢厚生年金は何歳からいくらもらえるのか?
★年金もらいながら働いていた者が仕事を辞めてハローワークに行ったら年金が出なくなるってホント?
★厚生年金はいったい何歳まで加入できるの? その分年金の額は増えるの?
d 国民年金について
★国民年金は何歳からいくらもらえるの?
★自分が会社を辞めたら被扶養者になっている妻の年金はどうなるの?
★年金の繰り上げ、繰下げって何?
このように、雇用保険、健康保険と年金については、定年退職者にとっては、まさに自分自身の問題です。
特に、雇用保険の基本手当の額とか年金の額とか、自分の財布の話なので真剣にならざるを得ません。
「自分たちの時代には年金なんて当てにできないだろうなあ」なんて、遠い話として勉強している若い受験者とは切実さが月とスッポンです。
いかがですか? 社労士試験が定年退職者に有利な点があることを納得していただけましたでしょうか。
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おまけ
次に、もう少し具体的な事例について書いてみます。
時間がある方は目を通していただければ幸いです。
実例1:在職年金制度のはなし
あなたは在職年金制度ってご存じですか?
これは年金を受給しながら働いて給料をもらっている場合、年金と給料(当月以前12か月内の賞与を含む)の合計額が一定額を超えたらその超えた額の2分の1相当額が年金から減らされる(一部支給停止)という制度です。
この「一定額」(60台前半は支給停止調整開始額、65歳以降は支給停止調整額といいます。ああ、ややこしい!)が、65歳の前と後では違っていて、今年の場合、前者は28万円、後者は47万円です。
【追記】 2020年の年金制度改革法により、60台前半の在職老齢年金は、60台後半と同じになり、支給停止調整額47万円になりました(2022年度から施行)。
なお、この「47万円」は年度によって1万円単位で変更されることがあります。
で、それはそれで仕方ないとして、ここで公務員であった私にとって重大な問題が発生したのです。
実は、2016(平成27)年10月に「被用者年金の一元化」が実施されて、公務員の共済年金が民間企業労働者の厚生年金に統合されました。
その結果、在職年金についても、支給停止調整開始額がそれまでの46万円から一挙に28万円にダウンしてしまったのです。
おまけに、一元化実施時点ですでに年金を受給していた者に対しては経過措置が取られたのですが、2016年10月以降に受給権が生じた者は経過措置もなし、です。
で、で、私は10月生まれで2016年10月に年金受給権が発生したもろに減額対象者なのです!
ああ、もう少し早く、9月に生まれていれば年金が減額されずに済んだのに!
なーに、それまで公務員が恵まれすぎていただけだ、一元化されたのだからそんなの当り前だろ、これだから公務員はダメなんだ、甘えるな、ざまー見ろ!
と、突っ込みを受けることを承知でこんな話をしたのは、ただただ、定年退職者にとって社労士試験の科目の一部は試験に合格するために必要な知識というばかりではなく、自分自身の生活そのもの、自分の財布の中身の話なのだ、ということの一例としてお示ししたかったからにほかなりません。
そうなると必死で勉強しますし、ほかのことはすぐに忘れてしまうのに、この28万円への恨みは忘れようとしても忘れません。
◇余談
飲み会で、私と同じ10月生まれの人と幾度このことを愚痴り、悔しがり、盃を重ねたことでしょう。

実例2:生年月日に応じた取扱いは自分を基準にして覚える。
これも年金の話ですが、年金制度には、その人の生年月日に応じた取扱いをする場合があります。
老齢年金は定年後の話ですから、この生年月日による取扱いは、定年退職者は自分のこととして関係してきます。
若い人は自分には関係のないことを試験のための知識として覚えるしかないのに対して、定年退職者は、自分の生年月日を基準にして覚えることができるのです。
① 60台前半の特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢
現在、経過措置として、年々支給開始年齢が引き上げられており、その人の生年月日によって、受給開始年齢が違います(生年月日が2年遅くなるごとに支給開始が1歳ずつ遅くなっていく)。
ただし、男性(公務員の女性も)は昭和36年4月2日以降、女性は昭和41年4月2日以降生まれの人は、一律に65歳からの老齢厚生年金のみとなります。
この生年月日による受給開始年齢の違いは重要項目なので覚える必要がありますがなかなか複雑で骨が折れます。
しかし、定年退職者は生年月日から自分の年金の受給開始年齢をいやでもすぐに覚えます。
そうすると、そこを基準に自分より〇年早く生まれた人は何歳から、〇年遅く生まれた人は何歳からと苦労なく答えることができます。
もしかしたら、自分の生まれた年が試験問題の事例として出題されることだってあり得ます。
② 障害基礎年金の厚生年金の被保険者期間の特例
年金保険料の納付済期間、免除期間が25年以上あれば、障害基礎年金の支給要件のうちの保険料納付要件を問わないという制度がありますが、この25年の特例として、生年月日によって厚生年金の被保険者期間が25年未満でも納付要件を満たす場合があります。
(例:昭和31年4月2日から昭和32年4月1日までの場合は被保険者期間24年で要件該当)
私の場合、23年での特例該当ですので、自分の生年月日を基準にこの特例、及び中高齢者の特例について覚えるようにしました。
ま・と・め
若い人が試験科目の制度知識として勉強するところを、定年退職者は自分自身の生活やお金に関する切実なこととして勉強しますので知識の定着度が断然違ってきます。
今回は、記憶力の試験といわれている社労士試験で、定年退職者には若い受験者より有利な点があるということをお伝えしました。
これから、社労士試験の体験記を載せていきます。
合格に向けてのヒントをお伝えすることができるものと思います。
乞うご期待!
拙い文章をお読みいただきありがとうございました。
(2019.11.01)(一部修正 2020.06.18最終)