- 1.商品選択より、「保険が本当に必要かどうか」を検討することが先
- 2.セールストークに乗せられてはいけません。
- 3.保険は自らの蓄えでは到底賄えないリスクを対象にするもの
- 4.「保障」は「万が一の事態」に備えるもの
こんにちは。
保険シリーズの3回目です。
1回目は、日本人は生命保険に過度に加入しているのではないかということ、2回目は、生保レディの勧誘で内容をよくわからないまま加入していることについて、お伝えしました。
今回は、複雑怪奇な保険商品の中から、どうやって自分に合うものを選べばよいか、ということについて考えてみたいと思います。
1.商品選択より、「保険が本当に必要かどうか」を検討することが先
1回目で、アメリカ人は住宅ローンを借りる時と相続対策のときだけ、というように、本当に必要なときだけに保険に加入する人が多い、とお伝えしました。
「保険」に関するこのシリーズを書くきっかけになりました、楠木新さんの「定年後のお金」(中公新書 P.97)には、次のような記載があります。
本来は、「保険が本当に必要かどうか」を検討したうえで、次のステップで「どの商品を選択するのか」の順番になるのが普通だろう。(中略)ところが日本では、(中略)いきなり商品選択の話に入ってしまうので、保険は難しくわからないと困惑することになる。「木を見て森を見ない」状態で悩むのだ。
まったくこの通りではないでしょうか。
目の前に並べられた保険商品の中からどれが良いかを選ぶのではなく、その前に、自分は、本当に保険を必要としているかを検討するのが先、ということは言われてみれば当たり前のことですが、私たちは、ついつい事前の「保険」の必要性の検討をしないまま、いきなり商品選びに入ってしまっています。
2.セールストークに乗せられてはいけません。
セールスする側は、そんなことは百も承知で、あの手この手(義理・人情・プレゼント)を使って、なんとか商品を購入させるように仕向けてくるのでしょう。
保険商品を購入するよう勧誘を受けている消費者は、圧倒的に不利な立場です。
まず「保険」に関する情報量に違いがあり過ぎます(情報の格差、情報の非対称性)。
セールス側は毎日、セールストークに磨きをかけて、お客をその気にさせようと必死の努力と研鑽を積み重ねています。
それも個人レベルの努力ばかりではなく、保険会社全体として、セールスのノウハウを研究、開発しているはずです。
説明の仕方、話し方などについて具体的な研修を行っているはずです。
客側は、保険商品の具体的内容をよく理解できないので、「この人は信用できる人だ」と営業職員を信用して契約することが多いのでしょうが、そのバックには信用させる戦略があることを忘れてはいけません。
最近のかんぽ生命の例を見てもわかりますように、営業職員のなかにはノルマを達成するために、お客の利益を無視するような不適切なセールスが行われることがあります。
いきなり商品選びという相手優位の土俵で相撲を取るのではなく、こちらの土俵、つまり、自分は本当に保険を必要としているのかという土俵で勝負をする必要があります。
今はその必要がないと思えば、はい、さようなら、それ以上相手の話を聞く必要はありません。
3.保険は自らの蓄えでは到底賄えないリスクを対象にするもの
楠木さんは「保険は自らの蓄えでは到底賄えないリスクを対象にする」と決めればかなりシンプルに考えることができる。またそれで必要十分だろう。」(同上書 P.98)と書いています。
そして、必要と考える生命保険として、
- 子が成人するまでの親の死亡保障、
- 住宅ローンを組むときの団体信用保険、
- 病気で働けなくなったときの所得補償保険(商品として成熟していない面があるが、との条件付き)、
- 相続税の課税対象外となる範囲の死亡保険
の4つを挙げています。
また、楠木さんは、損害保険については、「生命保険に比べれば、実際の損害と補償額が密接にリンクしているので必要性は高い。ここでも「自分で対処することができないリスク」を考えればよい。」(同上書 P.100)として、火災保険と自動車保険(ただし、車両保険は不要)を挙げています。
4.「保障」は「万が一の事態」に備えるもの
岩瀬大輔著「保険のカラクリ」(文春新書)では、生命保険が複雑になっている一つの理由として、「現代の生命保険が「保障」と「貯蓄」という、まったく異なる二つの機能を内包していることにある」(同書P.73)と指摘したうえで、「保障は、死亡保障のように、発生確率は低くても、起こってしまうと経済的損失が大きい「万が一の事態」に対して備えるものであるのに対して、貯蓄は起こる確率が高い、将来の出費(住宅の購入、子どもの教育費、老後の生活費)に備えるもの」(同書P.74)と書かれています。
岩瀬さんの「万が一の事態」と、楠木さんの「自らの蓄えでは到底賄えないリスク」は同じことを言っていると思います。
まずは、自分の家庭にとっての「万が一の事態」「自らの蓄えでは到底賄えないリスク」とはどういう場合が想定されるかについて検討することが、保険加入の出発点となります。
生計中心者の死亡に代表されるような、わが家にとって一番困ること(リスク)をまず考えて、それからそれに備えるために必要な保険は何かについて検討するようにしましょう。
リスクは、世帯ごとにそれぞれの事情によって違うでしょうし、世代によっても異なります。
若い世代では、子どもが成人して就職するまでは、親の収入が頼りですから、親の死亡は大きなリスクです(死亡保障-定期保険)。
子どもが就職して独り立ちすれば、そのリスクは大きく減退します(保険の見直し)。
今回は、保険については、いきなりどの商品がよいかではなく、自分の家庭にとってのリスクはどういうことかを、まず検討することが重要ということをお伝えしました。
次回は、保険の種類について、基礎的なことを整理したいと思います。
今日も、拙い文章をお読みいただきありがとうございました。
(2020.03.22)